松葉杖をつかずにトイレに向かう。
扉を少し開けると同室のおじいちゃんが
僕よりも先に朝のお通じをかましていた。
踵を返しベッド脇の松葉杖を手に取る。
廊下に出て、共有トイレで用を済ませると、
廊下の一番奥にあたる東側の窓に、
綺麗な朝焼けが写っていた。
年末年始にかけての12日間、
家族や友人と過ごすことなく、
家族や友人と過ごすことなく、
静かな病室の中で新年を迎えた。
いつもと違う時間を過ごしたからこそ、
見えるものがあり感じるものがあるはずで、
東側の窓に吸い込まれるように足を運んだ
この瞬間にも意味があると思った。
じっと日の出を見つめて、
少し心が穏やかになった気がした。
少し心が穏やかになった気がした。
入院3日目に、8068号室から
8066号室へと移動をした。
8066号室へと移動をした。
移動先には先人がおり、
先人と対になる窓側に入室をした。
先人と対になる窓側に入室をした。
少し経って、荷物を整理していると、
カーテンの向こう側から
カーテンの向こう側から
「今日のへむへむ次第では、
明日へむへむへむはむ」と、
明日へむへむへむはむ」と、
お見舞いに来ていた奥様に話しかける
先人の声と思しき不思議な音色が聞こえてきた。
先人の声と思しき不思議な音色が聞こえてきた。
奥様「そうなのね、良かったじゃない」
先人「まぁでもやっとへむへむへむはむ」
奥様「うん、何よりだわね」
先人「はむはむ」
これはすごいなと、
先人の語り口調に驚きを隠せない僕は、
先人の語り口調に驚きを隠せない僕は、
先人のことを、へむへむと呼ぶことにした。
へむへむは身体が大きくて、
ジャイアント馬場を連想させる風貌をしていて、
一言も会話をすることはなかったが、
ジャイアント馬場を連想させる風貌をしていて、
一言も会話をすることはなかったが、
へむへむの優しい語り口調そのままに、
昔話しの紙芝居でも読んでもらいたいなと思った。
入院4日目にお見舞いに来てくれた妻も、
目をまん丸にしてへむへむの
へむへむぶりにすこぶる驚いていた。
目をまん丸にしてへむへむの
へむへむぶりにすこぶる驚いていた。
入院中、
普段は読まない類の雑誌や漫画を読んだ。
普段は読まない類の雑誌や漫画を読んだ。
どれもお見舞いの品だった訳だが、
色々と発見があった。
色々と発見があった。
Pさんから貰った、
Numberの表紙が幼い頃から繋がりのある
Numberの表紙が幼い頃から繋がりのある
近藤篤くんの写真だったり、
昭和に起きた事件集みたいな
昭和に起きた事件集みたいな
雑誌に載っていた三島由紀夫の記事を見ていて、
なんとなしに「東京事変」ぽいな、と思って、
椎名林檎 三島由紀夫で検索をかけたら、
案の定、椎名林檎が三島由紀夫について
なんとなしに「東京事変」ぽいな、と思って、
椎名林檎 三島由紀夫で検索をかけたら、
案の定、椎名林檎が三島由紀夫について
歌っているとされている曲を見つけたりした。
三島由紀夫は東京五輪の観戦記を経て、
その先の割腹自殺へと繋がっていたそうで、
1964年の東京五輪から(三島事件は1970年)、
56年後の2020年。
56年後の2020年。
三島由紀夫イズムをどこかに纏う椎名林檎率いる
「東京事変」が復活することも
何かの因果かと解釈したり。
何かの因果かと解釈したり。
コバさんが買ってきてくれた、
「美味しんぼ」の一場面を読んで、
「美味しんぼ」の一場面を読んで、
「誰でも必ず いつかは死ぬ。
どうせ死ぬ短い人生なら 思い切り
生きなけりゃならない。」
「自分が幸せになるために。
そして、自分の愛する者を幸せにするために
一生懸命生きるんだ。」
「おまえのお父さんもそうだっただろう。」
自分の胸につき刺さる場面で、
思わず顔から潮を吹いた。
もっと、もっと思い切り生きたくて
自分の幸せと愛する人の幸せのために
もっと懸命になりたいと、心からそう思う。
入院中、King Gnuの白日を聴いていた。
YouTubeでこんなものを見つけて、笑った。
リハビリの院内散歩をする際に、
ジャイアンの歌う白日を聴きながら、
どうやって笑わずに、ナースステーションや
角を曲がるかをやってみたりした。
ニヤニヤしたい気持ちを抑えながら、
苦虫を噛み潰したような表情で、
ナースステーションを通りすぎる度に
「マジで、平然と出来て超カッコイイ俺」
ていう、中学生みたいな遊びを楽しんだ。
ラジオも沢山聞いたし、久びさにアニメも観た。
音楽は舐達磨を1番聴いた。
自分へのクリスマスPで買った、
Air Pods Proはかなり調子がいい。
明後日から、仕事が始まると思うと恐ろしいし、
子ども達に、右ひざをジャッカルされないように
何か手立てを考えなくてはならない。
2020年は、出来なかったことを叶える年。
僕と僕のそばにいる人の幸せのために。
サッカーが出来ない分、他のところで
僕と僕のそばにいる人の幸せのために。
サッカーが出来ない分、他のところで
沢山のことを吸収、収集して高めていきたい。
健康1番、79㌔もあるこの身体を、
70㌔まで絞ることを目標に頑張る。
サッカーをしなくなってから、近しい人に
なんかつまらなくなった?
と言われることが増えて、物凄く凹んだ。
弱ってるなりに、努力や鍛錬に勤しまなければ
いけないんだなぁ、甘んじたら自分のような
人間は終わりだな、と痛感した年末でもあった。
自分に厳しく、人に優しく。
どんな時も感謝と、目一杯の愛を忘れずに。
#つすめん


